親愛なるベスへ

【 親愛なるベスへ 】

ちょっと相談があるんだけど。
聞いてくれる?
ちょっと真剣な遊びで、ベスちゃんのメイクで、俺たちを聖飢魔IIにしてよ。

もちろんいいですよ!
やったこと無いけどやってみます!

マジで!?
ありがとうーー!!

ドウランだけ、吉右衛門さんの方で用意してくれますか?

わかったー!

うーん。。。。

これはメイクっていうより、アートですね♫
よし!だんだんコツ掴めてきた!

後の二人は、もっと早い時間でできますよ!

吉右衛門さんの無茶な注文のおかげで、私のメイクスキルの幅が広がりましたー!
ありがとうございます♫

伊藤さんの事務所開きのお祝いで、サプライズやるんだよ♫

へー!
それは面白そうですね!
なんか手伝うことあります?

じゃあベスちゃんは…
あ!このハンマーにさ、赤白のリボンで飾り付けしてよ♫

ええ?ハンマーって何に使うんですか?

樽酒買ったからさ、それを割るヤツ♫

なるほど!それはすごいですねー。
わかりましたー。

できましたー!

おお!うまいじゃない!さすがベス!

ありがとうございます♫

カフェラボの一階で、ヴィンテージの古着屋をやっている、眼の大きな彼女。

そんな彼女が昨日亡くなった。

亡くなった…

亡くなった⁉︎
亡くなった!!!???

本当に!?

「お元気さまー!!」

「ああ吉右衛門さん!どうもー。
今日はどうしたんですかぁ?」

「ラボで待ち合わせ」

「そういえば、吉右衛門さんに聞きたいことあって。」

「なになに?笑」

「吉右衛門さん、春菊作ってます?」

「作ってないよ、どうして?」

「食べたくて笑」

「春菊ピンポイントって初めてだわ(笑)
作るにしても種はこれから撒くんだよ。そうか、だったら今年は春菊作ろうかな♫」

「できたら教えてください♫」

「オッケー!当たり前だけど、めっさ美味いからよろしく!笑」

ひと月半ほど前の、いつもの何気ない会話。

親愛なるベスちゃんへ

もう、春菊畑は準備できてるんだよ。

今週中に種を蒔く予定なんだ。

育ったらさ、一番最初に持ってくよ。

食べてくれよな。

最高の春菊になるから。

明日僕は春菊の種を蒔く。

心よりご冥福をお祈りいたします。

中川吉右衛門

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